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Atlas(地図)というブログタイトルのとおり、読者のみなさまのキャリアや思考の道しるべとなる情報を発信していきます

パラグアイ戦の戦術はハリルホジッチの遺産なのか? 日本代表が目指す真の「俺たちのサッカー」

最終更新日:2018年6月14日

6月12日に行われたW杯前最後の親善試合、日本代表がついに躍動した。

対戦相手がW杯に出場しないパラグアイであることを加味しても、攻守がうまく噛み合っており、W杯直前に価値ある勝利を掴むことができた。

4-2-3-1の前線である岡崎、香川、乾、武藤によるハイプレス、ボランチ柴崎の出足の早い守備&ビルドアップが見事にハマった試合だった。

特に、前半17分の乾のゴール [link] および後半45分の香川のゴール [link] は、前線からのプレスが機能し、高い位置でボールを奪えたことにより、相手の守備の枚数が揃う前に攻め切ることが出来ていた。

ハイプレス&ショートカウンターは本当にハリルの遺産なのか

Twitterで「4-2-3-1でのハイプレス&ショートカウンター戦法はハリルホジッチ監督が仕込んだもの」という旨のツイートがバズっているのを目にした。

W杯直前のタイミングでハリルを解任したのは悪手だったと私も思っている。そうであっても、この意見に私は違和感を覚える

パラグアイ戦のハイプレス戦術は、ハリルが仕込んだものというよりは、選手たちが所属クラブや過去の日本代表で養ってきた経験が生きた結果生まれたものだと私は考えている。

岡崎、香川、乾は前線からのハイプレスを重視するクラブで長くプレーしてきた実績がある。

岡崎に関しては、彼の献身的なファーストコンタクトおよびプレスが、レスターの15/16シーズン優勝の原動力となった。

香川はクロップ政権時代のドルトムントの中心として活躍。クロップは、ボールを失った瞬間にチーム全体が連動して早いタイミングでボールを奪い返す「ゲーゲンプレス」と呼ばれる戦術を掲げ、香川はシャドーストライカーとして最高の切れ味を発揮していた。

乾に関しても、エイバルのメンディリバル監督はハイプレス&ショートカウンターを標榜 [link]しており、乾はその一役を担っている。

つまり、彼らはもともとハイプレス技術の素養があり、それを実行する意識もある、ということだ。ハリルが仕込むまでもなく、所属クラブで身につけていることなのだ。

さらに言うと、日本代表の試合で岡崎、香川、乾が同時出場したのは、ハリル就任直後の2015年3月に行われたウズベキスタン戦 [link]まで遡らなければならない。

ハリル時代は、岡崎や乾は不遇な扱いを受けており、招集・起用されない試合も多かった。

数ヶ月前までハリルが監督だったのだから、ある程度彼の影響が残っているのは当然だ。それを考慮した上で尚、「パラグアイ戦の戦術はハリルの遺産」と表現することには私は違和感を覚える。

近年のトレンド戦術「ハイプレス」

そもそもハイプレス&ショートカウンターは近年のトレンド戦術だ。

相手の守備の枚数が揃う前に攻撃を終わらせる。これが最も効率的な攻撃であることは納得していただけると思う。だからほとんどの監督がこの形を目指す。

過去の日本代表でも、ハイプレス戦術を浸透させようと歴代の監督たちが試行錯誤していた。

ザッケローニはウディネーゼ時代に3-4-3でのハイプレス戦術で有名になり、代表監督就任当初はそれに近い戦術を試していた(満足のいくシステムとならず、最終的には慣れ親しんだ4バックを選択した)。

アギーレも全体をコンパクトに保ってハイプレスを仕掛けるスタイルを得意としていたし、岡田武史もW杯直前に戦術変更を行うまでは、前線から激しくプレスをかけるスタイルを目指していた。

ハイプレス&ショートカウンター戦法は、ハリルだけによってもたらされたものではないと言うことだ。

ハリルの得意戦術はロングカウンター

それに、ハリルはショートカウンターよりロングカウンターを得意とする監督であると私は思う。

ハリルホジッチは、ブラジルW杯でアルジェリア代表を率い、優勝チームであるドイツを延長戦まで追い詰めたことで名を上げた。

当時ハリルが採用していたのは、基本的にはリトリート&ロングカウンター戦術だ(例:ブラジルW杯の韓国戦 [link])。

自陣エリアに選手を揃えてブロックを形成し、ボールを奪ったら前線にロングボールを送ってカウンターを狙う「堅守速攻」のスタイルである。

韓国戦の動画を見て頂ければわかるが、1点目、3点目はともにディフェンダーから供給された超ロングボールによって得点が生まれている。

そして、日本代表監督時代もほぼ同様の戦術を目指していたと私は考える。

ハイプレス&ショートカウンターが機能したのは、W杯最終予選のオーストラリア戦くらいしか記憶にない(間違っていたらごめん)。

それ以外の試合では、格下チーム相手に自陣に引きこもる展開すらあった。どちらかと言えば、日本代表はショートカウンターよりロングカウンターに頼った戦いを強いられていたと思う

ハリルの思想は選手選考にもよく表れている。ハイプレスとショートカウンターの優先度が高い場合は、プレス戦術に慣れた岡崎や乾を選ぶべきだが、ハリルは大迫や浅野を重宝していた。

おそらく、岡崎よりボールを収められる能力が比較的高い大迫、乾よりスピードのある浅野という判断だったのだろう。ロングカウンターを重視したからこその人選ではないだろうか。

ハリルと選手たちはなぜ衝突したのか

ハイプレスが機能しない場合の戦術

ここからは完全に私の想像なのだが、ハリルと選手たちは「ハイプレスが機能しない場面(つまり試合中ほぼずっと)での戦術」について意見を衝突させてしまい、それがハリル解任に繋がったのではないだろうか

ハイプレスが機能しない場合の主な選択肢を2つに分けると、

  1. 遅攻で得点を狙う
  2. ロングカウンターで得点を狙う

がある。

選手たちは前者、ハリルは後者を望んでいたのだと思う。

ロングボール戦術に対する選手達の不信感

選手たちはハイプレス&ショートカウンター戦術に苦言を呈していたわけではなく、ハイプレスがハマらない場面での攻めの形について不満があったのだろう。

彼らは「ハイプレスがハマらない場合にロングカウンターを狙っても、ボールを収められる能力のある選手がチームにおらず、逆に相手にボールを奪われ攻撃を続行される可能性が高いから、遅攻の方がマシ」と考えていたのかもしれない。

バルセロナと日本代表の差 

代表選手たちが理想としているであろう「高い位置でボールを奪ったらショートカウンター、それ以外は遅攻」という形。これと同じ戦術を採用したチームがある。ルイス・エンリケ監督時代のバルセロナだ。

14/15シーズンにチャンピオンズリーグ優勝を果たしたのバルセロナは、ハイプレスとポゼッションプレイどちらも得意としたチームだった。

遅攻(≒ ポゼッション)の場合は相手チームの枚数が揃っている状態で攻めるため、選手の個人能力が高くなければ得点に結びつけることは難しい。

エンリケ時代のバルセロナにはMSN(メッシ、スアレス、ネイマール)という強大なタレントが前線にいたため、遅攻での破壊力もあった。当時のバルサなら、ハイプレスを仕掛けなくてもリーグで上位に位置するくらいの力はあったはずだ。

それに対して、日本代表の選手たちは個の能力が高いとは言えず、遅攻だけでゴールをこじ開けることは難しい。そのため、ハイプレス&ショートカウンターにも磨きをかける必要がある。

これがバルセロナと日本代表との埋めようもない差だ。

※遅攻に関しては、パラグアイ戦の1点目のシーンのような動きが毎試合できれば良いのだが…。DFからのショートパスを起点にし、前線の選手たちがオフザボールの動きを連動させることで生まれた見事なゴールであった [link]。

今の日本代表ではロングボール戦術は機能しない

個々の能力が低い日本代表が効果的に得点を上げるためには、相手の枚数が揃う前に攻めきるカウンターに頼るしかない。

しかし、あまりにもハリルはロングカウンターを重視しすぎて、選手と衝突してしまったのではないだろうか

ベルギー遠征での山口の「監督はロングボールを蹴れ蹴れと言うけど、いつも蹴られるわけではない」というコメント、大迫の「縦に速いだけじゃ無理」というコメントなどを見れば、彼らがロングボール戦術に確かな疑問を抱いていたことがわかる。

ハリルとしては、自陣でボールを奪取した場合にも、アルジェリアvs韓国戦のようにDFから前線へ(グラウンダーかロブかには関わらず)ロングボールを蹴って欲しかったのだろう。

ハリル自身は、前線の選手たちは十分にボールを収められるし、裏のスペースにうまく抜けて得点に繋げられると感じていたのかもしれない。

しかしながら、ロングボール戦法の採用が厳しいことは、昨日のパラグアイ戦を見れば私でもよく分かる。日本の選手たちは、致命的なほどキック精度が低い

シュートとロングボールを合わせると、何度もボールを明後日の方向に飛ばしてしまっている。プレッシャーのかからない場面でさえだ。

日本人の中ではキックの精度が高いと言われる柴崎でさえ、ロングキックを失敗する場面が見られた。

海外のトップクラブの試合を見ると、選手のキック精度が極めて高いことが分かる [link]。プレッシャーがかかっている場面でも自由自在にパスを送り、サイドチェンジをし、前線にロングボールを供給している。このキックの技術が今の日本代表の選手には不足している。

これではロングカウンターの成功率が低くなる。 また、大迫ら前線の選手がロングボールを収めその後にゴールを決めきれるかというと、決してそうは思えない。

ハリルがアルジェリア代表でロングカウンター戦術を採用できたのは、前線に大きくて強いスリマニ(188 cm)や、快足のフェグリらがいたからだ。さらに、ドイツ戦しか出場していないが、超テクニシャンのマフレズもいた(当時はほぼ無名)。

また、リトリートしてロングカウンターを狙う場合は守備がベタ引きの状態になるが、高さもフィジカルもない日本の守備陣では、簡単に失点を許してしまう

今回のパラグアイ戦でも、PA内でハイボールの対処に戸惑い失点するシーンが見られた [link]。

アルジェリア代表と似た戦術を採用しても、日本の選手たちにはそう易々とはこなせないだろう。

ロングカウンターは日本代表のメンバーの特性とうまく噛み合っていない。

ついには解任...

この、ハイプレスが機能しないケースでのロングボール戦術が自分たちには向いていないと考え、選手たちはハリルと意見を戦わせていたのかもしれない。

お互いが最後まで納得できず、ついには「コミュニケーションに問題がある」ということでハリルは解任に追い込まれた…というのが、自分の想像した解任劇の経緯である。

弱者だからこその「俺たちのサッカー」

ザックの戦術は間違っていたのか

かつて、カタール代表元監督 故ブルーノ・メツは、ザックJAPANを「アジアのバルセロナ」と評した。

ちょうどこの頃から「俺/自分たちのサッカー」という言葉を代表選手たちが口にするようになった。その言葉をファン達は「バルセロナのような、パスを交換して相手陣形を崩すサッカー」と単純に捉えたに違いない。

ブラジルW杯のグループステージで無残に敗退して以降、「俺たちのサッカー」という言葉は、情けない試合をした選手たちを揶揄する言葉としてネット上で使われ始めた。

W杯で1勝も出来なかったことで、「パスサッカーでは世界と戦えない」とファン達は感じ始めたのだ。ロングカウンターを得意とするハリルの就任もパスサッカーへの失望から生まれたのかもしれない。

「俺たちのサッカー ≒ 遅攻」と捉えて代表選手を批判するファンは多い。しかし、上でも述べたが、ザッケローニが本来目指していたのはハイプレス&ポゼッションで試合を支配するサッカーであったはずだ。

ザックが掲げた戦術、そして今回のパラグアイ戦の内容を省みると、選手たちが理想とする「自分たちのサッカー」と、ファンが思う「自分たちのサッカー(≒ 遅攻)」には少しズレがあると私は考える。

ザックが目指す戦術が結実した試合が2試合ある。2013年11月に行われたオランダ戦 [link] とベルギー戦 [link] だ。

攻撃面では、前線の選手の効果的なオフザボールの動きのおかげで、ボール保持者がバイタルエリアにうまく侵入する場面が目立った。守備面では、前線からのハイプレスが機能し、相手に思い通りの攻撃をさせていない。

その結果、強豪であるオランダ・ベルギーを相手に引き分け以上の結果を残した。守備陣のつまらないミスがなければ、どちらの試合も完勝と呼べる内容になっていたはずだ。

完成形に迫りつつあったザックJAPANがブラジルW杯での敗因の一つは、コンディション調整の失敗だと言われている。キャンプ地と試合会場で気温や湿度が大きく異なっており、それが選手のコンディションに影響を与えた。

調整失敗はザックの戦術に多大な影響を与えたはずだ。なぜなら、ハイプレスは想像以上に選手のスタミナを消費するからだ。

状態が良くない選手達は効果的なプレッシングが行えず、遅攻に頼らざるをえない状態に追い込まれた。

先ほども書いたように、個の能力が低い日本代表は効果的な遅攻をすることが難しい。

個の能力が低い場合、ボール保持者がバイタルに侵入するためには、選手のオフザボールの動きが重要になる。しかし、状態がよくない日本の選手たちにはそれも難しかったのかもしれない。

もちろん、対戦相手に研究され尽くしていたという側面や、単純に相手の実力が高いため思い通りの動きをさせてくれなかったという側面もあるだろう。

ザッケローニが目指したサッカーは間違っていたわけではない。実際、ベルギーとオランダに対しては素晴らしい戦いをしているからだ。

ロングカウンターは真の弱者のための戦術ではない

ザックのハイプレス&ポゼッションに対し、ハリルの主な戦術はロングカウンターだ。

ロングカウンターは「弱者の戦法」とよく呼ばれる。「日本代表は弱者なのだからロングカウンターを極めるべき」といった意見もネット上では見られる。 しかし、本当にそうなのだろうか?

私にはロングカウンターが弱者の戦法だとは到底思えない。 ロングカウンターは個々の選手の能力が低いチームではほとんど機能しないからだ。

ここでは、15/16シーズンにプレミアリーグ優勝を飾ったレスターを例に挙げよう。

シーズン開始前、レスターは残留争いが予想されるほどの弱小チームだった(優勝オッズはなんと5,000!)。だが、彼らは「本物の弱者」であっただろうか?

当時のレスターには、高身長で屈強なCBモーガンとフートがおり、中盤にも刈り取り屋であるカンテ、前線には快速選手のバーディやテクニシャンのマフレズがいた。

特にカンテ、バーディ、マフレズは今やプレミアリーグでも屈指のタレントであり、決して弱者とは呼べない。

レスターの戦術は、大雑把に言えば、ボールの支配をほぼ放棄してひたすら守り、ボールを奪ったら前線に蹴り出し、バーディーとマフレズになんとかしてもらう、というものである。ロングカウンターを支えたのは、選手らの才能と勢いだったのだ。

真の弱者のための戦法「ハイプレス&ポゼッション」

日本代表はレスターのようにはいかない。ディフェンダーは決して屈強とは言えず、キックの精度も悪く、高身長/快速のアタッカーもいない。日本こそ本物の弱者なのだ。

そんな弱者が頼ることのできる唯一の戦術、それがハイプレス&ポゼッションだ。

自陣で守り通せないなら、全員が連動してプレスをかけ、相手の陣地でボールを奪い、ショートカウンターで一気に勝負をつける。ショートカウンターが不可能な場合は、相手に攻められる時間を減らすためポゼッションで攻め上がりシュートで攻撃を終わらせる。

つまり、

攻めるのが苦手なら、相手陣地でボールを奪えばいい(ハイプレス&ショートカウンター)。

守るのが苦手なら、相手に攻めさせなければいい(ポゼッション)。

ということだ。

サッカーでは攻撃は最大の防御となり得る。もちろん弱点はあるし、高い練度を必要とする。

もう一つ加えるなら、

個で打開できないなら、選手の連動性を高めて相手DFにバイタルを開けさせ、ゴールを決めればいい(オフザボール)。

だろうか。

これらこそ、身体的・技術的に劣位な日本代表が目指してきた本当の「俺たちのサッカー」であったはずだ。

フィジカルと個の能力が要求されるロングカウンターより、統率を取って走り勝つハイプレス&ポゼッションの方が日本人のスタイルには合っていると思う。

代表選手たちは、自分たちをバルセロナの選手のような一流の選手だと勘違いして「自分たちのサッカーをしたい」と口にしていたわけではきっとないはずだ。

圧倒的不利に立たされる日本が勝つために残された唯一の戦術。それが「自分たちのサッカー」だ。

ただ、弱者の兵法といえど、それを実現することは簡単ではない。

実力的に劣る日本の場合、こちらの戦術がハマらない場合は相手の出方に合わせて試合運びをしなければならなくなる。どの位置でブロックを組むかなど、一筋縄ではいかない駆け引きが必要になる。

サッカーは動的なスポーツだ。ハイプレスとポゼッションがそれぞれ機能しないときに選手達がどれだけ耐えられるかで勝負が決まるという側面もある。だから高いレベルの戦術と練度が必要なのだ。

ハリル解任後に残された少ない時間では、練度を高めることは困難だったであろう。だから私はこのタイミングでの監督解任は反対だった。解任するなら、せめて韓国に敗れた昨年の12月に決断するべきだったのだ。

ただ、今回のパラグアイ戦を見るに、絶望するほどは悪くない。田嶋会長の「日本らしいサッカーをやりたい」という言葉も、あながち戯言ではないのかもしれない(たぶん戯言)。

まとめ

この記事で述べた私の考えをまとめると、以下の3点になる。

  • ハイプレス&ショートカウンターは、ハリルの遺産というより、長きにわたって日本代表が目指してきたものであると同時に、各選手がクラブで培ってきたもの
  • ハリルと選手たちが衝突した原因は、ハイプレスが機能しない場合の戦術にあるのかもしれない
  • 「俺たちのサッカー」の本来の姿こそ、真の弱者である日本に適した戦術である

今回のパラグアイ戦で、W杯に向けての一縷の希望を見いだすことができた。特に、ゲーゲンプレスに似た「すぐさま攻撃に繋げられる守備」を実行できていたことが印象的だった。

本戦では、選手たちはとにかく「走って」ほしい。強度の高いランを行うことで初めて、ハイプレスおよび遅攻時の効果的なオフザボールの動きを実現できる。

依然、グループリーグでの勝利が難しいことに代わりはないが、今回の結果を受けてW杯本戦が楽しみになってきたことは確かだ。

夢を力に。頑張れ、SAMURAI BLUE。

ツイートとブログがバズるとどうなるか

最終更新日:2018年5月25日

最近、ツイートとブログ記事がバズった

まずツイート。学習サイト(いわゆるMOOCと呼ばれるもの)を紹介したツイートだ。東京から地元に帰る深夜バスの中で暇つぶしに呟いたツイートである。

 

たった3,000RTなので、Twitter上級者の方にとっては「バズった」とは呼べないかもしれないが、ふぁぼが15,000までいったのでバズ扱いでいいかな…(?)。

100〜1,000RTの呟きは以前からしばしばあったが、自分のツイートの下に「K」の文字がついた呟きはこれが初めてであり、なかなか嬉しかった。

もう一つはブログ記事だ。オウム真理教の一連の事件に関わった中川死刑囚が執筆した論文のレビュー記事である

www.wynned.com

こちらは正真正銘のバズと呼んでいいだろう。公開後の3日間で、はてなブックマーク数が400を超え、50,000PVを稼いだ。

はてブの人気記事の欄に掲載され、そこから記事を読んだ人がTwitterでシェアし、さらにブックマークが増えるという好循環が起こった。

本ブログは通常時400〜600PV/日、更新頻度1記事/週の雑魚ブログであるので、今回は大貢献したと言ってよいだろう。

さて、バズったら一体何が起きるのだろうか?

未経験の方は「バズとか最高やん!有名人になったみたいで!」とか思うかもしれない。

だが、実際に経験するとメリットばかりではないことに気づく。これから詳しく紹介しよう。

バズったらどうなる?

通知が鳴りまくってスマホの充電が死ぬ

通知、ヤバい。どれぐらいヤバいかというと、通知でスマホが熱を持つくらいヤバい。俺のiPhone SEの電池の寿命、ちょっと縮んだんじゃないかな…。やめてよね、これより良いiPhone存在しないんだから…。

1,000RTを超えたあたりから、嬉しさが憎しみに変わっていくのを感じたよ。泣く泣く通知を切ると、かなり快適になった。

フォロワーから「おまえのツイートめっちゃ伸びてるじゃんwwwwもう有名人だなwwwww」とリプが来る

どうも、有名人です。クッソ...なんか嬉しくねえ。てか、そのネタちょっと飽きた!

クソリプの嵐

めっちゃクソリプとクソ引用RTくるやん。

一番笑ったのは「#◯◯[ユーザー名]メモ」とだけ書かれた引用RTが来た時。

なんやそれ!!ツイート主に通知がいくメモってなんや!便所の落書き以下やぞ!ブックマーク機能使えや!!!

まぁ、使い方は自由だから、いいけどね…。

また、皮肉を皮肉と受け取ってくれない人がいたり、誹謗中傷っぽいコメントもあったりしたが、それは想定内。

どんな内容であっても、バズったら誹謗中傷のコメントが必ず届きます。かわいそうな人だと思って無視するしか選択肢はありません。

はてブのコメント欄ではてな民同士がバトルを始める

記事に対して賛否両論が出るのは、こちらとしても想定済み。だけど、なんでそこでバトル始まっちゃうの?(笑)

しかもマウンティングっぽいことしてる人までいるし…。

言っちゃ悪いけど、Twitter民よりはてな民の方が陰湿な書き込みが多い。返信ができない仕様なのを良いことに、言いたいことだけ言ってるんでしょうか?

寝てるだけで金入るわ!

ほんと、これだけは嬉しい。Twitterだとバズってもお金は入らないが、ブログは広告を貼ってさえいれば収益が発生する。Googleアドセンスのページを見てお金が入る様子を観察するのは精神に良い。

ただ、時給換算すると大して旨味がないことに気づく。今回のオウム記事の執筆にかかった時間は約3時間だが、収益は3日間でたった3,000円である。

時給1,000円だ。普通にバイトした方がマシ。道は険しいです。

バズらせたい人へ

ここからは、ツイートやブログ記事をバズらせたい物好きな人たちのために、自分なりのアドバイスを送る。

月並みなアドバイスになるが、それだけ重要なポイントだと思って欲しい。

もちろん、自分は今回たまたまバズっただけで、そこまで影響力がある人間ではないので、素人の戯言として聞いて欲しい。

1. 「誰か」の役に立つ情報を発信する

最も重要なことである。人々は知識に飢えている。一見飢えていないような人でも、実は飢えている。

純粋に知的好奇心に任せて積極的に知識を求める人もいれば、誰かを叩きたいがためにネガティブな情報を求める人もいる。そうした人々の心にザクリと突き刺さるコンテンツを提供すれば、勝手に伸びる。

また、自分の得意とする分野でまだそれほど話題になっていない情報を見つけたら、それを素早くコンテンツに転換して発信すると、予想以上の伸びを見せることがある

今回のオウム論文記事が良い例だ。誰が見てもインパクトがある話題なのに、私が毎日新聞のニュースで見た時はまだそれほど話題になっていなかった。

アンテナを張り巡らせば、オイシイ話題はどこにでも落ちているように思える。

2. 分かりやすくキャッチーに

どれだけ面白い情報でも、相手に伝わらなければ意味がない。

今回のオウム記事のソースは科学論文なので、かなり専門的だ。しかし、記事にする際は高校生でも理解できる程度の文章レベルに抑えた。リプやコメントで「わかりやすくおもしろかった」と褒めてくれる方が多く、素直に嬉しかった。

Twitterの場合、10代・20代の利用者が多いと言われている [link]。そのため、高度な知識を持たない人でも理解できる文章に仕上げるべきだ。

もう一つは、表現が多少あざとくなろうとも、タイトルやサムネイルをキャッチーにすることだ。自分のポリシーが許すギリギリのレベルまでキャッチーにしよう。

今回のオウム記事では、サムネイルとして以下の画像を使用し、Twitter民やはてな民の注目が集まるように仕向けた。そして、記事の最後でもボケ(?)をかましている。

f:id:raye4483:20180527011828p:plain

もちろん、キャッチーさを追い求めるほどリスクも大きくなる。

今回、自分的には「浅はかな業績マウンティングをする人がTwitterなどでもよくいるので、今回のニュースをそのようなマウンティングのネタにするのはやめましょう」という皮肉のつもりで記事に差し込んだのだが、皮肉と伝わらず気分を害した方もいるようだ。

キャッチーにすればするほど誤解を招く。そのため「自分のポリシーが許すギリギリのレベルまで」と申したのだ。

3. ポジティブな情報を発信しよう

これはただの提言なのだが、なるべくポジティブな感情がこもった情報を発信しよう。

なぜか?ネガティブな感情を含むコンテンツはさらなるカオスを生むからである。

はっきり言ってしまうと、ネガティブな情報を発信した方が伸びる。これは間違いない。誰かを褒め称えたい人より、誰かを貶したい人の方が多いからだ。

Twitterやブログはネガティブな情報で溢れている。タイムリーな話題としては、日本大学アメフト部の問題だ。日大の問題はもう止まることを知らないレベルで炎上している。

みんなで叩けば気持ちいい。だが、外野からネガティブな感情を込めて「正論」を語っても、問題が解決するどころか、さらなる不和を生むことが多い

それに加えて、ネガティブなツイート/記事が伸びると、同じ質量のネガティブな感情がリプやコメントとして返ってくる。これは非常に精神に悪い。

オウム記事のはてブのコメント欄は、もう開きたくもないほど厳しい正論で溢れている(もちろん、ポジティブなコメントの方が多い)。

これは、煽りにも見える言葉が含まれている事や、話題自体がネガティブだった事が原因だろう。

それに対して、学習サイトを紹介したツイートに対しては、クソリプの類はほとんど届かなかったツイートがポジティブな感情と有益な情報で構成されていたためだろう。

もしあなたがバズりを体験したいなら、何かを叩くのではなく、何かを賞賛したり、誰かの生活を向上させる情報を発信することでバズらせよう。

今の日本はネガティブな情報で溢れかえっている。国民はもはや悲観することにすら慣れ、諦観の境地に至っている。

メディアやSNSがネガティブな感情を濃縮し読者に浴びせかける装置として働いているのをあなたも感じるはずだ。

このままでは、自分もみんなも、消耗するだけだ。それを少しでも避け、現在の状況を改善するには、ポジティブな情報を発信するしか方法がなさそうなのだ。

簡単なことだ。Twitterやブログで、あなたが好きなものをみんなに教えればいい。好きな料理、好きな作品、好きな芸能人、好きなスポーツ。なんでもいい。

あなたが楽しめば、みんなもそれに乗っかって楽しみ、その様子を見てさらにあなたは楽しくなる。

クサくなってしまったが、変に斜に構えてネガティブな感情を暴発させるよりは良いだろう。

腹を立てるより、楽しむ方がいいよね。

それでは、世に平穏のあらんことを。

よくよく運のない男の質問コーナー #003「学位留学:メールは簡潔に」

最終更新日:2018年5月25日

「よくよく運のない男の質問コーナー」第3回です。

今回は以下の質問に答えました。

 

質問は質問箱Twitterにお願いします。

よくよく運のない男の質問コーナー #002「英語学習、功を焦るな」

最終更新日:2018年5月24日

「よくよく運のない男の質問コーナー」第2回です。

今回は以下の質問に答えました。

 

質問は質問箱Twitterにお願いします。

オウム死刑囚が執筆した論文をレビューする

T. Nakagawa, A. T. Tu, “Murders with VX: Aum Shinrikyo in Japan and the assassination of Kim Jong-Nam in Malaysia,” Forensic Toxicol., 2018, in press [link].

オウム真理教の元信者、中川智正死刑囚が執筆した論文が学術誌に掲載されたというニュースが飛び込んできた [link]。ニュースを見た時は「どうせ後ろの方に名前を載せてもらっただけだろ」と思っていたのだが、実際に論文を読んでみてビックリ。ファーストオーサー(筆頭著者)として論文を執筆している。

タイトルは「Murders with VX: Aum Shinrikyo in Japan and the assassination of Kim Jong-Nam in Malaysia(VXによる殺人~日本におけるオウム真理教とマレーシアでの金正男氏暗殺)」だ。本記事では、「死刑囚が書いた科学論文」という、世にも珍しい論文を紹介する。

最初に断っておくが、私は化学の修士号を持ってはいるものの、化学兵器やオウム真理教に関する知識はあまり持ち合わせていない。調査をした上で記事を書いているが、参照元がWikipediaなどのネット記事であるため、もしかしたら間違っている箇所があるかもしれない。その点ご了承ください。

著者について

中川 智正

本論文は、中川氏と杜祖健(と そけん、英語名:Anthony Tu)博士による共著論文となっている。中川氏は言わずと知れた元オウム真理教の幹部で、確定死刑囚である。

同じく死刑確定囚である土谷正実らと共に化学兵器製造に従事し、松本サリン事件では実行犯にも加わった。現在は広島拘置所に収容されている。

杜 祖健

共著者である杜博士は、米コロラド州立大学の名誉教授であり、毒性学、生物化学兵器の専門家だ。台湾出身だが、非常に日本語が流暢である(気になる方は動画を探してみてください)。

毎日新聞の記事には「毒物研究の世界的権威」と記されている。調べてみると、ResearchGateのプロフィールページを見つけた [link]。300報近い論文を世に出しており、引用数も5,000を超える立派な科学者である。「世界的権威」という形容にもうなずける。

杜博士はオウム真理教事件にとても関わりが深い人物だ。彼は1994年に日本の専門誌「現代化学」に化学兵器に関する論文を載せており、それを読んだ土谷氏がVXを作ることを思いついたと言われている。

その後、一連のサリン事件において、化学物質の分析方法を日本警察に提供し協力している。

つまり、この論文はオウム真理教事件の実行犯と警察に協力した人物のタッグによって執筆されているのである(!)。漫画のような展開だ。

執筆に至った経緯

杜博士は次のように語っている。

私はテロ対策の目的で面会を重ねましたが、中川死刑囚はいつも記憶に従い率直に話してくれました。

昨秋の面会時に、中川氏から『自分の経験を社会に役立てたいので英文で論文を書きたい』と聞いて協力し、権威ある専門誌に掲載できました。

長年、日本の法務省や拘置所が面会を許可してくれたことに感謝しています。

つまり、中川氏自らが執筆を申し出たのだ

内容紹介

掲載雑誌について

本論文は日本法中毒学会が編集・出版する"Forensic Toxicology"という雑誌に掲載されている。インパクトファクターは3.744と高く、優れた学術誌に思える。毒物学の分野では有名なのだろうか?

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概要

論文の前半では、オウム真理教内でのVX製造・使用の経緯が記され、後半では金正男暗殺事件で使用されたVXについての考察が行われている。簡潔に書かれていて非常に読みやすい。

また、中川氏の所属機関が"Hiroshima Detention Center(広島拘置所)"なのも非常に興味深い。刑務所から論文を出した研究者が未だかつていただろうか?世界中探し回ったらいるのだろうか...。

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VXの化学構造式

当事者によって記されたオウム事件の詳細

論文の文章から漂うのは、圧倒的な「当事者感」である。特にこの文章がすごい。

There is no documentation regarding the toxic nature of the two types of VX (salt-free and HCl) in the literature; however, this was actually shown by Aum Shirikyo’s terrorist action. This was known only by two persons who were involved in the manufacture of VX. The first author of this paper was actually involved in such manufacturing [unpublished observation].

この二種類のタイプのVXの毒性に言及した文書は存在しない。しかし、その毒性はオウム真理教事件によって証明されている。これはVXの製造に携わっていた2人(つまり、中川智正と土谷正実)だけが知っている。この論文の筆頭著者は実際に製造に関わっていた(未発表)。

どうでしょう、この当事者感。ふつう、論文で「この物質の毒性についての先行研究はないよ。でも自分で使ったから知ってる!」なんて書いたら、その時点でrejectされると思うのだが、オウム事件ともなれば言葉の説得力がものすごい。

文末にunpublished observationと補足されているのも何だかおもしろい。普通の研究者がこんなことを書けば「本当にその実験、やったの?」と疑われるところだが、このケースではデータが世に出ることはありえない。世間に知られてしまえばテロを実行できなくなってしまう。

金正男暗殺に用いられたVXに関する考察

本論文の真骨頂は後半部分である。後半では、金正男暗殺事件に使用されたVXについての考察がなされる。

未だ記憶に新しい金正男暗殺事件。2017年2月13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港にて、北朝鮮の最高指導者である金正恩の兄、金正男がベトナム人とインドネシア人の女性2人による襲撃を受け、病院へ搬送される最中に死亡した。

事件発生直後は殺害に殺虫剤が使用されたと報道されたが、後の調査で神経毒VXの使用が確認されている。驚くべきは、犯行が短時間のうちに手際よく行われたことである。2人の女性がそれぞれ金氏の顔に触れているが、犯行にかかった時間はたった7秒であった。

もしVXが直接使用されたのであれば、どのようにして手に猛毒を塗ったのだろう。しかも、直接使用していれば加害者である女性自身も死んでしまうかもしれない。

調査の結果わかったのは、インドネシア女性とベトナム人女性の体から検出された化学物質はそれぞれ全く異なるものであるということだ。このことから、事件で使用されたVXは二種混合型(バイナリー型)であると著者らは結論づけている

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2人の女性から検出された物質が全く異なることが分かる

バイナリー兵器(二種混合型化学兵器)は、毒物の代わりに、その前駆体となる2種類の物質が容器内に隔離された状態で保存されている化学兵器のことであり、それらを反応されることによって毒物を発生させる。

今回のケースでは、VXの前駆体(毒性は低い)を2人の女性がそれぞれ所有し、金氏の顔の上で2種類の物質を反応させ、VXを発生させたことになる。そのため、2人の身体からは全く異なる種類の化学物質が検出されたのである。

検出結果より、2つの前駆体はそれぞれethyl methylphosphonic acid、2-(diisopropylamino)ethanethiolだと著者らは予想している。VXを低温で発生させることは難しいため、何らかの触媒が使用されたか、温度を上げる処理がなされた可能性があると指摘している。 

死刑囚をも受け容れる「科学」の懐の深さ

論文を読んで思ったのは「この論文、意外とよくできてね?」ということである(失礼)。もちろん、データが少なかったり論理が曖昧だったりする箇所はあるが、きちんと科学論文の体を成している。加えて、化学テロの実行犯が記した事件記録としても質が高いものになっている。

ジャニーズ「タッキー&翼」の滝沢秀明氏が著者として名を連ねる論文が出版され、話題を呼んだことは記憶に新しい。今回はなんと、死刑囚である。アイドルのみならず死刑囚まで受け容れてしまう科学の懐の深さには驚嘆するしかない。

日本全国の不遇な大学院生たちが「死刑囚ですら論文持ってるのに、君は持ってないの?」と煽られるのも時間の問題である。

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悪質なマウンティングをしないよう気をつけましょう

講義ノート:Introduction to Computer Science and Programming Using Python - edX

最終更新日:2018年6月21日

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講義:Introduction to Computer Science and Programming Using Python - edX [link]

概要

このコースはMITの学部生が1年次に履修する講義を、edXのプラットフォーム用に焼き直したものである。

計算機科学とプログラミングの知識を持たない人向けに、問題解決に取り組むために必要な「計算論的思考」「プログラムの書き方」を教えることを目的としている。

本記事は、私がこの講義で学んだことを順に示していく、講義ノートである。読者のみなさまの学習の指針になれば幸いである。

この講義で学ぶこと

  • 計算の概念
  • プログラミング言語"Python"の紹介
  • 単純なアルゴリズム
  • テストとデバッグ
  • 計算複雑度
  • データ構造

Week 1: Python Basics

Introduction to Python

Introduction

コースの紹介がなされる。本コースの目的は、簡単に言えば

  • 計算論的思考
  • コンピュータにして欲しい事をやらせる方法

を身につけることである。具体的なトピックとして以下の6点が挙げられている。

  • 知識表現とデータ構造
  • 反復と再帰
  • 抽象化とデータ型
  • クラスとメソッドによるモジュール化
  • アルゴリズムの種類
  • アルゴリズムの複雑度

コンピュータが行う基本的な操作は次の2つである。「計算(calculation)」「記憶(memorization)」だ。

尋常ではない速さでこの2つを実行する。それがコンピュータだ。

しかし、いくら速く計算ができても、アルゴリズムが貧弱であれば意味がない

例えば、インターネットで検索をする場合やチェスをプレイする場合には、組み合わせの数は膨大となり、「賢い」アルゴリズムを用いなければ何日もかかってしまう。

また、優れたアルゴリズムを用いても解ききれない問題や、元より計算で解けない問題というのも存在する。

Knowledge

知識には種類がある。宣言的知識(declarative knowledge)手続き的知識(imperative knowledge)だ。

宣言的知識(declarative knowledge)

事実を述べたもの

例:椅子の下にテープが貼られている
手続き的知識(imperative knowledge)

レシピまたはhow-toのこと

例:
1. 教室の前で学生と向き合う
2. 列数える
3. 真ん中の列の左端から始める
4. 右に1つずつ数える
5. 目的の椅子に到達し、テープを見つける

コンピュータにとっては手続き的知識が特に重要だ。コンピュータに細かく指示を出して問題を解決することが出来るからだ。

レシピは以下の要件を満たす。

1. 単純なステップの連続
2. いつそのステップが実行されるかを指定する
3. いつ停止するかを指定する

これをアルゴリズムと呼ぶ。

Exercises 1

Video: Introductionの項で学んだ範囲から選択式問題が出題される。

Exercises 2

こちらはKnowledgeの範囲からの出題だ。

Machines

計算機の構成の話が解説される。歴史的には、2種類のコンピュータが存在する。fixed program computerとstored program computerである。

fixed program computer

実行される命令があらかじめ決定されている。プログラムの変更はできない。

例:チューリングボム(Alan Turing's Bombe)

第二次大戦中にアラン・チューリングが開発した、ドイツの暗号機エニグマを解読する機械。
暗号解読に特化しており、他の問題を解くことは出来ない。
stored program computer

命令を保持し実行する機能を有した計算機。

例:我々がいつも使っているパソコン

stored program computerは主に記憶装置(Memory)、演算装置(Arithmetic Logic Unit)制御装置(Control Unit)で構成されている。

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Figure 1. 計算機の構成
記憶装置(Memory)

データや命令列を記憶する。

演算装置(Arithmetic Logic Unit)

記憶装置からデータを取り出して読み取り、加算および減算、そして論理演算を行ったあと、記憶装置に戻す。

制御装置(Control Unit)

演算装置で実行された操作を追跡・格納する。記憶装置に保存されたプログラムのどの部分を実行しているか管理している。

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Figure 2. チューリングマシン(Wikipediaより引用)

上図はチューリングマシンと呼ばれるもので、四角形が描かれた無限の長さのテープで出来ており、それぞれの四角形の中には記号が書かれている。
チューリングは、以下の6つの基本プリミティブさえあれば、計算可能な計算である限り、どのような計算でも行えることを証明している。

プリミティブとは、構造の構成要素である基本的な構造のことを意味している。

1. move left
2. move right
3. read
4. write
5. scan
6. do nothing

一見不可能に思えるが、これらのプリミティブを組み合わせて抽象化を行えば、さらに高度な操作を行うことができる
現在使用されているプログラミング言語は、より便利で高度なプリミティブを実行できるようになっている。

また、任意のプログラミング言語で実行できる計算は、他のいかなるプログラミング言語を用いても同様に計算できる
この性質をチューリング完全(Turing-complete)と呼ぶ。

Exercise 3

Machinesで学んだ内容に関する真偽・選択式問題が出題される。

Language

プリミティブの複雑かつ正当な組合わせを式(expression)を呼ぶ。正当な式および計算は値(value)を持ち、それは式の意味を表している。

この講義では、プログラミング言語の構造について説明するために、自然言語である英語をアナロジーとして用いて分かりやすく説明している。

プリミティブの構成要素

英語:英単語

プログラミング言語:
・数字(numbers)
・文字列(strings)
・演算(operations)
シンタックス(syntax)

構文規則のこと。文字列がきちんと構文規則を満たしているかどうか。

英語:
・"cat dog boy" → シンタックス的に誤り
・"cat hugs boy" → シンタックス的に正しい

プログラミング言語:
・"hi"5 → シンタックス的に誤り
・3.2*5 → シンタックス的に正しい
静的セマンティクス(static semantics)

シンタックス的に正しい文字列が意味を成しているかどうか。

英語:
・"I are hungry" → シンタックス的に正しいが、静的セマンティクスエラーを起こしている

プログラミング言語:
・3.2*5 → シンタックス的に正しい
・3+"hi" → 静的セマンティクスエラーを起こしている

 "I are hungry"という文章は、SVC型の要件をきちんと満たしており、シンタックス上は問題ない文章だ。しかし、静的セマンティクス上は正しくない。"I"には"am"を組み合わせるのが正解だ。

 プログラミング言語において、3+"hi"というコードはprimitive, operator, primitiveという構造なのでシンタックス的には正しい。しかし、数字と文字列を足し合わせるのは不可能なので、静的セマンティクス的には誤りだ。

セマンティクス(semantics)

シンタックス的および静的セマンティクス的に正しい文字列に関連づけられた意味のこと。

英語:
1つの文章でも様々な解釈が可能
・"Flying planes can be dangerous" → (自分が飛行機に乗っている場合)飛行機墜落するかもしれないから危険?それとも、(自分が地上にいる場合)飛行機が自分に衝突するかもしれないから危険?

プログラミング言語:
コードはただ1つの意味を持つ。しかし、プログラマーが意図した意味とは異なることがある。いわゆるバグだ。

シンタックス、静的セマンティクス、セマンティクスについて意識することは、プログラムを書く上で重要だ。
バグを含むプログラムが引き起こす問題として、以下のようなものがある。

シンタックスエラーがある場合

・ありふれており、簡単に見つけられる

静的セマンティクスエラーがある場合

・プログラムを実行する前に静的セマンティクスエラーがないかチェックしてくれる言語がある
・実行すると予測不能な挙動を示すことがある

静的セマンティクスエラーはないが、プログラマーが意図したものと異なる意味をコードが持ってしまっている場合

・コンピュータがクラッシュし、実行が中断される
・プログラムが永遠に終わらない
・期待していた解と異なる解を与える
この通り、シンタックスとセマンティクスを理解せずにコーディングすると、重大な問題を引き起こしてしまう。

さて、改めてこの講義の目標を記すと、以下のようになる。

・プログラミング言語のシンタックスとセマンティクスについて学ぶ

・それらを理解し、問題解決のための「レシピ」をコンピュータが解釈し実行できる形に翻訳する方法について学ぶ

・複雑な問題を解決する一連の手法を活用するための計算論的思考を身につける
Exercise 4

シンタックス、静的セマンティクス、セマンティクスのそれぞれの定義に関する問題が出題される。 

Types

 

よくよく運のない男の質問コーナー #001「GPAは過去のもの」

最終更新日:2018年5月24日

「よくよく運のない男の質問コーナー」記念すべき(?)第1回です。

質問箱に届いた質問にまずはTwitterで答え、その中でも特に有用だと思った質問をYouTubeで取り上げます。

今回は以下の質問に答えました。

 

質問は質問箱Twitterにお願いします。