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失敗しない「研究室の選び方」

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「どの研究室を選ぶか?」

研究室配属が近づいた大学3年生の多くが抱える悩みである。

「研究室選び」は「大学選び」と同じくらい大切だ。あなたの今後の人生を大きく左右する一大イベントである。 

今回は、私の経験を元に、失敗しない研究室の選び方について記す。

私は今まで4つの研究室に所属したことがある。見学したことのある研究室の数は国内・国外を含めて30を超える。

これは学生としては比較的珍しいケースだと思うので、より多くの視点を読者のみなさまに提供できるはずだ。

それでは、研究室を選ぶ際にチェックすべきポイントを以下に記していく。

1.自分と向き合う

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あなたは将来何をしたいだろうか?

キャリアプランは?価値観は?ライフスタイルは?

まずは、そういった問いを自分に投げかけてみよう。

研究室選びは就活と同じでマッチングが大切だ。

就活する際、就活生が自己分析を行うのをご存知だろう。それに近いレベルで自己分析を行い、自分のキャリアプランや価値観を見出そう。

ゆったりと研究生活を送りたい学生もいれば、研究を通じて自分の価値をひたすら高めたい学生もいるはずだ。

研究室には短くて1年、博士課程まで進学するなら5年間は在籍することになる。

自分のスタイルと合わない環境に5年間も居続けるのは、はっきり言って地獄である。

自分のキャリアを実現でき、自分の価値観やライフスタイルとの親和性が高い研究室を選ぼう。

2.教授と自分の相性

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最も重要なポイントだと私は感じている。

前述の通り、指導教授とは長い付き合いになるからだ。ウマが合わない人を指導教授に選んでしまうと、お互い後悔することになる。

中高時代に部活動をした経験のある方は多いと思う。

顧問の先生との関係が最悪だったらどうだろうか?すぐに辞めたくなるはずだ。

結婚相手を決めるくらいの覚悟で指導教官を選ぼう。

では、どのようにして自分との相性を確かめるのか?

まずは、研究室訪問をして一対一で話してみよう。

しかしながら、それだけではあまり判断がつかないはずだ。どんな性格が悪い教授でも、配属前の学生には良い顔をする。

なぜなら、教授にとって学生とは、悪く言えば研究のための「労働力」であり、それを欲しがらない人間などこの世にはほとんど存在しないからだ。

配属前には、教授の話を真に受けすぎてはいけない。

次に、研究室のメンバーに教授の人格や研究スタイルについて聞いてみよう

話を聞く相手をランダムに選ぶのではなく、可能であるなら、学部生、修士過程の学生、博士課程の学生、ポスドクなど、立場の異なる人を選び、それぞれと話そう。

学部生と大学院生、ポスドクでは教授から求められる仕事が全く違う。

そのため、学部生にしか分からない苦悩や、大学院生にしか分からない苦悩、ポスドクにしか分からない苦悩がある。

「学部生の時は優しい先生だと思っていたのに、大学院に入った途端に要求されるレベルが跳ね上がって、精神的に辛くなってしまった」というケースも散見される。

研究室のメンバーは未来のあなたを映す鏡と言えるだろう。

学部生と話をするなら1年後のあなたの姿、博士学生と話すなら4年後のあなたの姿が目の前にある。

今はSNSがあるので、そういったネットワークを使ってコンタクトを取るのも有効だ。

自分が興味のある研究室の評判について、他の研究室の学生に尋ねるのもおすすめだ

研究室のメンバーはネガティヴな情報を教えてくれないことがあるからだ。

他の研究室の学生からの評判は的を射ていることが多い。「火のない所に煙は立たぬ」という諺もあることだし。

次に、教授の人格に加えて、その人の研究哲学にも注目してみよう。

あなたはこれからその研究室に配属され、指導教授の弟子になる。私は、師弟制度の本質は、師匠の哲学を自分のスタイルとして取り込むことにあると考えている。

守破離」は日本における師弟関係のあり方の一つだ。学生時代は「守」の段階に当たる。

意識するかどうかに関わらず、指導教授の哲学や研究スタイルは少なからず自分に継承されることになる。

その教授は、自分の思い描く理想の研究者だろうか?

もしそうでないのなら、その研究室に所属した場合、未来のあなたもその教授のような人間になっている可能性がある。

3.コアタイム

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教授や所属学生に、研究室のコアタイム(必ず研究をしなければならない時間帯)を尋ねてみよう。

1日のコアタイムが8時間を超える研究室は、かなりのハードワークを要求される研究室だと思う。

日本の大学生は学費を支払って学んでいる「お客様」だ。

お金をもらっている社会人でさえ(建前上は)8時間の労働が上限なのに、学生がそれ以上の時間拘束されるのは、ハッキリ言って何かがおかしい。

このような研究室に所属する場合は、心や身体を壊さないよう細心の注意を払って研究生活を送る必要がある。

私が見てきたドイツやフランスの大学の研究室では、平日はみんな夕方6時には帰り、土日はそもそも大学が空いていない、という環境であった。

それでも日本の研究室と同等以上の研究成果を出している。彼らは、無駄なことは一切せず、その代わりに重要なタスクに最大限の注力を行っていた。

研究に従事する時間が長いほど良い研究成果が得られるとは限らない。

最終的には、自分のライフスタイルと相談して研究室を決めることになる。

4.研究資金と研究環境

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ぶっちゃけ、お金があるとハイレベルな研究ができる。

「研究室を主宰するPI(Principle Investigator)の持っている研究資金が多い」=「研究環境が良い」と言い換えてもよい。

同じ大学・学科内でも、お金を水のように使っている研究室もあれば、少ないお金をなんとかやりくりして研究している研究室もある。

欧米の大学においては、研究資金の大部分は学生やポスドクなどの「人」を雇うために使われる。

それに対して、日本の大学では、研究設備や消耗品などの「研究資材」にあてられる傾向にある。

研究室の設備をチェックすれば、その研究室にお金があるかどうか大体分かるわけだ。

ただ、専門的な知識を持っていないと研究部屋を見ただけで判断するのは難しいので、他の研究室の設備と比べてみたり、所属メンバーに聞いてみたりするのが良い。

教授に直接聞くのは失礼にあたるかもしれないので、所属メンバーに聞いてみるのがいいだろう(できれば博士学生かポスドク)。

科研費のウェブサイトで、教授の名前で検索をかけてみるのも良い手段だ。科研費を継続的に獲得できているだろうか?

研費以外の財源を持つ教授も多いが、科研費を毎回キッチリと取ってきているかどうかは良い指標になる。

また、その研究室にポスドクが何人いるか確認してみよう。

研究における主戦力は、博士課程以上の人材だ。つまり、手っ取り早く研究結果を出したいなら、ポスドクを雇えばいいのだ。

そのため、ポスドクを雇っていない研究室は資金的に苦しい状態なのかもしれない

ただ、地方大学レベルの研究室ではポスドクが少ないのが普通だったりします。それでもある程度の目安にはなるので、忘れずチェックしよう。

5.研究業績

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言うまでもないが、研究業績が出せているかどうかも重要なポイントだ。

研究者の短期的なミッションは「論文を出版する」ことだ。

論文は研究結果を公表するための最もメジャーな手段である。研究資金を獲得できるかどうかも研究業績に大きく左右される。いわば飯のタネだ。

学生目線でも考えてみよう。

あなたの研究結果が論文として世に出なければ、この世に存在しないのと一緒だ。

Apple創業者である故スティーブ・ジョブズも以下のような言葉を残している。

いくら素晴らしいものをつくっても、伝えなければ、ないのと同じ。

研究に没頭するのも良いが、自分の研究結果を伝える努力をしなければ、科学界や社会に貢献することはできない。

大学・大学院は研究者を育てる機関であり、学生達は「論文を出版する」経験を何度も積むことで一人前の研究者になっていくはずだ。

何が言いたいかというと、論文を出版する経験を積めないという事は、大学に所属するメリットの一つを享受できないということだ。

そういった経験がしっかりと積める環境かどうかは、研究室のHPでPublicationの欄を見ればわかる。

出版された論文の著者の中に、(最近の)学生の名前は入っているだろうか?(HPが更新されておらず、現在の所属メンバーの名前が確認できない、とかは論外だが...)

また、学生が筆頭著者となっている論文がどれくらいあるかもチェックしよう。

一般的に、論文は筆頭著者によって書かれている。学生が筆頭著者になっている論文が少ない場合、その研究室では論文執筆の経験を積むことができない可能性が高い。

6.博士課程の学生やポスドクがいるか

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博士学生やポスドクが在籍しているかどうかは、研究技術の継承度合いに大きく影響する。

前述の通り、研究室の中心戦力は博士学生やポスドクだ。

学部生や修士学生は一部の例外を除き赤子みたいなもので、研究について誰かに教えられるほどの知識や経験は持っていない。

学年が一つ上の学生が後輩を指導するケースも多いが、この方法では研究に関する知識・技術が十分に継承されず、世代交代を繰り返すと壊滅的な状態に陥ることがある。

研究技術の継承は伝言ゲームみたいなものだ。何世代か経ると、上の世代がしっかり伝えたはずの研究技術が全く違う形で残っていることもある。

そこで重要になるのが、長期間に渡る研究の経験があり、豊富な知識・テクニックを持つ博士学生やポスドクという存在だ。

彼らには研究室のひずみを修正できる能力がある。研究室の大黒柱的な存在だ。

しっかりとした指導を受けて正確な知識・技術を身に付けたいのなら、博士課程やポスドクが多く在籍している研究室を選ぶのが吉だ。

7.グループ内の人間関係

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メンバー同士の人間関係も研究生活に大きく影響を与える。

学生間の仲が悪いのも辛いが、教授と准教授(または助教)の仲が悪いのは最悪だ。

教授と准教授との間に板挟みになり、どちらか一方との関係を悪くしてしまうケースがある。

グループ内に仲の悪い人物が1人でもいると、あなたの研究生活は一気に辛いものになる。

研究室を訪問してグループの雰囲気を実際に感じ、自分に合っている場所なのかどうか判断するよう心がけよう。

8.卒業生の進路

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卒業生の進路は、みなさんにとって一番重要なことかもしれない。

卒業生の進路について研究室のHPに書かれてないようであれば、思い切って教授や学生に聞いてみよう。

自分のキャリアプランを実現できない研究室に入ってしまうと、後悔するどころの話ではなくななる。

卒業生の進路をチェックする際のポイントは、博士課程に進学した卒業生や研究者になった卒業生がどれくらいいるかという点だ。

博士学生の多い研究室は、それだけ過ごしやすい環境である可能性が高い。

環境が悪い研究室で博士課程に進学したいとは思わないはずだ。また、研究を楽しめない人は研究者になろうとは思わない。

博士学生が多く、研究者になった卒業生が多い研究室は、環境が良い可能性が高い。

9.自分がやりたい研究かどうか

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これも確かに重要だが、私は二の次で良いと思っている。

教授との相性など、他の要素の方が良い研究生活を送る上では重要だからだ。

それに、卒業後にアカデミアに残るにしろ企業に就職するにしろ、学生の時と同じ研究をすることはできないし、許されていない。

自分の興味ある分野の少し外にまで視野を広げて、自分に合う研究室を探すのが良いかもしれない。

研究をあまりやりたくない人は 

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上記のアドバイスは「研究に対するやる気がある人」向けだ。

ただ、「自分はどうしても研究をやりたくない」という方もいるはずだ。そういう方は、研究以外の時間が多く取れそうな研究室を探すのがいいだろう。

大学には研究に積極的ではない教授がたまに居る。そういった教授の研究室には、学部卒で就職したい学生が多く集まる傾向がある。

そのような研究室を見つけて残りの大学生活を楽しむことも、選択肢の一つだと私は考えている。

こちらも参考に

数は少ないが、研究生活の参考になる書籍が出ている。

以下、私が実際に読んで素晴らしいと感じた書籍3冊を紹介する。

研究室選び、研究生活について悩んでいる人は、ぜひ手にとってみてほしい。

研究室/研究テーマの選び方から、研究の進め方まで、研究生活に関することを幅広く扱っている。

読むと元気が出てくる本だ。 

 

「研究生活ガイド」は学部生〜修士学生向けというイメージだが、こちらは博士学生〜若手研究者向けだ。

より長いスパンで研究生活を考えるための一冊。

 

論文の執筆方法のみならず、論文執筆を見据えた研究テーマの選び方・研究遂行に関する有益情報が得られる良著だ。 

 

それでは、みなさんが自分に合った研究室に配属されることを祈っている。

研究室選びの相談

読者さんの研究室選びに関する相談に答えた記事があります。

ぜひこちらもご参照ください。

www.wynned.com