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アメリカ大学院出願で有利な立場に立つためのポイント【理系学生向け】

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先日、アメリカ大学院の出願する方法について書いた [link]。

アメリカ大学院の入試倍率はかなり高く、トップスクールでは5~20倍であることが普通なので、しっかりと出願準備をする必要がある。

今回は「出願で有利な立場に立つためには、どのようなことに気を付ければいいか」という視点で記事を書いている。

志望校の教授とのコンタクト

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志望校の教授とコンタクトを取り、出願前に自分について知ってもらえていると、選考を有利に進めることが出来ると言われている。

自分が一緒に研究したいと思っている教授、研究テーマに興味がある教授にメールでコンタクトを取ろう。 

アメリカ大学院には入試関係の業務を取り仕切るAdmissions Committee(入学審査委員会)というものが存在する。彼らが持つ権限も大学や学科によって様々である。

Admissions Committeeが入試に関わる全権を持つ場合、教授と直接コンタクトを取っても「入学後に話し合おう」という返事が来ることがある(体の良い断り文句である場合もある)。それに対して、教授の一言で学生の入学が決まる学科も存在する。

どちらにせよ、出願前に必ず志望校の教授にコンタクトを取ろう。

もちろん、教授の人格も多種多様なので、親切に情報を与えてくれる教授もいれば、出願者からのメールには一切返信しない教授もいる。ダメ元でメールを送ってみて、返事がきたらラッキー程度に思っておこう。

教授にメールを送る際は、簡潔なメールを送ろう。長くても20行。 教授は多忙なので、長文のメールはゴミ箱行きだ。彼らは1日に何十通・何百通とメールを受け取っていることを心に留めておこう。

最初に送るメールは、

  1. 自分の所属、研究実績などの紹介
  2. その教授の研究のどこに興味を持ったのか、なぜその研究をやりたいのか
  3. 持っているスキルと、それを駆使してどのように研究に貢献できるのか

などの情報をまとめて送るだけで十分だ。返信が来てから詳しい話をする方が良いだろう。

ただし、具体的かつオリジナリティある内容に仕上げないと、見向きもされない可能性があるので、キッチリ時間をかけて文章をしたためること。

メールにCV(履歴書)を添付するのも定番である。ただし、添付ファイルを開かない教授もいるらしいので、本文の下にテキストで「ミニCV」を載せるといいかもしれない。

GPA、出版論文、受賞歴、奨学金の有無などを簡潔に書くといいだろう。

件名も簡潔で分かりやすいものにしよう。私は "[Q] PhD opportunity" とだけ書いて送ってしまったが、もっとinformativeな件名にすべきだったと後悔している。

"Fall 2018 Prospective Student: Need Reseach Assistantship Info"などと書いておけば目を引くのではないだろうか。

確実に返信が欲しい場合は、現在の指導教官に紹介メールを送ってもらうと良いだろう。教授同士が知り合いの場合は基本的に返事が返ってくるし、スムーズに話を進めることができる。

高いGPA(成績)

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GPAは最低でも3.0以上をキープしておこう。もちろん高ければ高い方が良い。

世界大学ランキングで50位に入ってくるような大学院では、合格者の平均GPAは3.6~3.8と極めて高いので、可能であれば3.5以上を維持したいところである。

もし現在所属している大学がGPA制度を採用していない場合や、GPAとは異なる評価制度を採用している場合には注意が必要だ。

私の通っていた大学では独自のGPA制度を採用しており、最高評価である「秀」は「90%以上の点数 + 履修者の上位5%」という条件を満たす者にしか与えられなかった。

そのため、学科トップの学生でもGPAは3.3~3.4ほどだった。私のGPAも3.3だったが、これくらいのGPAだとアメリカでは平凡な学生に見えてしまう。

私のようなケースもあるので、所属大学の成績評価制度が通常のものと異なる場合は、その旨をStatement of Purpose(エッセイ)で述べるなり、推薦状に記してもらうなりすると良い。

アメリカの大学院には何百何千という数の応募が集まるので、Admissions Committeeは出願後にわざわざあなたに確認などしてはくれない。過小評価されないためにも、自分でキッチリ説明しておこう。

もう一度言う。GPAは重要だ。4.0を目指そう!

もちろん、GPAが低くても大学院に合格する人はいる。ただ、GPAが低いと不利な立場に立たされることは間違いない。

そのため、留学を志した瞬間から講義をしっかり受けるようにして、出来る限り高いGPAを維持するようにしよう。

あまりにも学部時代のGPAが低い場合は、いったん日本の修士課程に進学してGPAを上げる、という手もある。

論文や受賞歴などの豊富な研究実績 

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研究実績を目に見える形で残そう

アメリカ大学院に合格するために最も重要なのは研究実績だと私は思っている。特に、アジアからの出願者については研究実績をしっかりチェックされるはずだ。

なぜなら、GPAがアテにならないからだ。アメリカ国内で名が知れているアジアの大学と言えば、中国やインド、シンガポールの一流校くらいである。その他の有象無象の大学の成績評価などアテにならないと思われていても、不思議ではない。

そのため、推薦状を読むか、出願者の研究実績を見ることで出願者の研究能力を測ろうとする。

研究論文や一流学会での発表実績は、GPAよりよっぽど信頼性のある指標になる。

アジアの大学に所属する学生は、研究面でアドバンテージを得るしかないと思った方がいい。言語能力やディスカッションの能力は、アメリカ国内の学生に叶うはずはない。

本気で大学院留学を目指すなら、研究に精を出し、論文や学会発表など目に見える形で研究実績を残しておこう

研究実績が優れていると、良いことがたくさんある。志望校の教授にコンタクトを取る段階で既に優れた研究実績があれば、彼らもあなたの研究能力に興味を示し、メールを返してくれるかもしれない。

加えて、指導教官もあなたの推薦状を書きやすくなる。

CVやSoPで自分の研究をアピールしよう

CVを見るだけで、その学生の研究能力は大体分かる。出版済みの論文や発表経験、受賞歴がある場合はCVに漏れなく記入しておこう。査読中の論文についても記しておくと良いかもしれない。

Statement of Purposeでも、自分の研究テーマや得られた結果についてしっかりアピールしておこう。

SoPでは、ただ単に「ジャーナルに論文を通した」「有名な国際学会で発表した」と記すのではなく、「その論文で何を明らかにしたのか」や、「学会発表でどのような経験を得たのか」など、CVから得られない具体的な情報を書こう。 

具体的なエピソードが添えられた推薦状や、著名な研究者から添えられた推薦状

通常は2-3通の推薦状の提出を求められる。研究室の指導教官や、良い成績を取った授業を担当していた教授、会社の上司などに頼むのが一般的だ。

特に強力だと言われるのは、

  1. 具体的なエピソードが添えられた推薦状
  2. 有名研究者からの推薦状

である。

具体的なエピソードが添えられた推薦状 

客観的かつ具体的な評価が記されている推薦状は高い説得力を持つ。

推薦状に「この学生は非常に優秀で、研究にも熱心に取り組む学生だ」と書かれているより、「この学生は私の履修した講義で上位3%に入る成績を収めた。研究にも主体的に取り組んでいる。自ら研究テーマを考案し、私のアドバイスを受けながら自律的に論文執筆・投稿を行った。これは日本の学部生としては珍しく、彼は私が今まで指導した○人を超える学生の中でも、3本の指に入るほどの逸材だ」と書かれていた方が、格段に説得力がある。

例を挙げよう。ゲーム理論における「ナッシュ均衡」と呼ばれる解を発見し、ノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュという科学者がいる。

彼がプリンストン大学の博士課程に出願する際、彼の指導教官が推薦状に

He is a mathematical genius. (ジョン・ナッシュは数学の天才である。)

と記したことは有名である。以下が推薦状の実物らしい。

数十歳も年上の教授に「彼は天才だ」と言わせる学生は世界を見渡してもそうはいない。"He is a mathematical genius."という一文は、ジョン・ナッシュの優秀さを十二分に表していると言って良いだろう。

もちろん、この世の99.999%の人間はこのような推薦状を得ることは出来ない。

そのため、もっと具体的なエピソードや、数字を用いた「客観的な評価」を推薦状に盛り込んでもらうのが良いだろう。

有名研究者からの推薦状 

著名な研究者からの推薦状も強力だ。どこの馬の骨かもわからない教授からの推薦状に「彼はかなり頭が良い」と書かれているのと、優れた研究実績を持つ教授からの推薦状に「彼はまぁまぁ頭がキレる」と書かれているのでは、後者の方に説得力があると感じてしまう。

ここでも一つ例を挙げよう。

ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊は、ロチェスター大学の博士過程に出願する際、同じく物理学賞を受賞した朝永振一郎に「この学生は成績は悪いけど、そんなにバカじゃないよ」と推薦状に書いてもらったと語っている。

その後、小柴さんはロチェスター大学を1年8ヶ月という同学の最短記録にて博士号を取得し、最終的にはノーベル賞を受賞した。

この記事で取り上げた小柴とナッシュは、非常に極端な2例だ。それでも、アメリカ大学院入試において、「具体的なエピソードが添えられた推薦状」と「著名な研究者からの推薦状」がどれだけ効力を発揮するかについて、ご理解いただけたのではないだろうか。

結局、「勉強・研究を頑張って、周囲の人からの信頼を勝ち取れ」という、自明でつまらない結論に至る。当たり前のことを当たり前のようにこなすのは、意外と難しいものだ。

高いGREスコア

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GREとは、Graduate Record Examinationの略で、北米の大学院に進学する人全員が受験しなければならないテストである。

一般知識を問うGeneral Testと、専門知識を問うSubject Testの2種類がある。工学系の学科に出願する人以外はGeneral Testのみを受験すれば良い場合が多い。

GRE General Testは、Verbal reasoning(語彙・読解)、Quantitative reasoning(数学)、Analytical Writing(ライティング)の3セクションで構成されている。

Verbal、Quantitativeは130~170点の範囲、Analytical Writingが0.0~6.0点の範囲で評価される。

アメリカ人も受けるテストなので、恐ろしいほど難易度が高い。ワケの分からない英単語がたくさん出てくるのだ。TOEFLやIELTSが雑魚に思える(雑魚とは言ってない)。

特に、VerbalとAnalytical Writingは日本人にとっては難しく、TOEFLやIELTSで高得点を取れる人でも、ノー勉で臨めば135点、3.0点ほどしか取れない。

それに対して、Quantitativeセクションは簡単。中学校で数学をきちんと学んだ人は苦労せず満点を取れるだろう。満点はムリでも、理工系学生なら最低でも160~165点は取ろう。

Quantitativeで満点を取っていても大したアピールにはならないのだが、VerbalやAWで高得点を取っていると良い印象を与えるようだ。

「おっ、この出願者は数学の能力だけでなく、(留学生にしては)英語能力も高いのね」という印象をAdmissions Committeeに与えることが出来るからだ。

Verbalセクションで160以上取れる日本人はほとんどいないので、もし余裕がある場合はチャレンジすると良い。

 

結局は、「研究者としての総合力」が高い人が合格する

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合格を勝ち取るために意識することは数多くあるが、結局は「研究者としての総合力」で判断される。

「TOEFL・GREのスコアはイマイチだが、当該分野のトップジャーナルにいくつも論文を出している学生」と、「TOEFL・GREのスコアは上位1%だけど、研究実績が一つもない学生」、あなたが研究室主宰者だとしたらどちらの学生が欲しいだろうか?

ほとんどの教授が前者にオファーを出したいと思うはずだ。

後者のような出願者が外国人である場合、代わりに英語圏の学生を取ればいい。TOEFLやGREで高い点数を取っていても、結局はノンネイティブなのだ。

トップスクールの入試担当の方に次のような話を聞いたことがある。

「アジア人学生の場合は、TOEFL・GREの点数を見るより、”名の知れたジャーナルに筆頭著者として論文を通しているかどうか”を見ているし、それを最終的な判断基準にしている」と。

厳しい基準だ。アメリカの大学院生、特に博士課程の学生は、給料をもらって研究を行う。

教授は大学院生に給料を支払わなければならない。そのため、伸びシロがある学生より即戦力の学生を求める傾向がある。

このような事実があるので、私がもし今からもう一度出願準備に取り組むなら、

研究>良い推薦状の確保>高GPA(>3.5)の取得>TOEFL・GREでの高スコアの取得

の順に力を入れる。基本は研究第一。良い推薦状や志望校とのコネクションは優れた研究実績に付随してくる。

こちらも参考に

理系大学院留学出願に関しては以下の書籍に詳しい。この記事を読んで留学に興味が出た方は、ぜひ読んでみて欲しい。